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最期を前に何が食べたい? ホスピスの「リクエスト食」

【朝日新聞 2013.8.21(水)】

 ホットケーキ……友人とカフェで食べたアイスとイチゴ、生クリームが載っているもの(30代女性)
 担々麺……出張先でよく食べた。辛めで元気が出る(60代男性)
 ばらずし……私のばらずしは家族に好評。かんぴょう、レンコン、ゴボウ。お酢はきつめ(80代女性)

 これはなんのメニューでしょう。


 淀川キリスト教病院ホスピス(大阪市)は毎週土曜日、患者のリクエストに答えて「リクエスト食」というメニューを出しています。これはその一例です。金曜の夜、一人一人のリクエストを聞き、翌日の夕食に提供しているそうです。
 ホスピスですから、治る見込みがない、まもなく最期を迎える人たちが入院する病院です。その人たちが「食べたい」とリクエストしたメニューです。

 記事に紹介する、末期がんの79歳の男性が、その日に頼んだのはお刺身。「好きなもん、最後に残してあんねん。漁師町生まれやし、好物は魚や」。そういってカツオの刺身を力強くかみしめます。妻が「よう食べたね。旅行に来たみたいや」と笑いかけると、男性はじっと黙ったあと、「そやな」とぽつり。
 食事を通して、妻との旅行の思い、自分の生まれ育ち、いろいろなものがよみがえり、万感の思いが胸にこみあげたに違いありません。
 男性はその2日後に昏睡に陥り、数日して亡くなったと記事にあります。お刺身が最後のリクエスト食になりました。

 記事にはまさにそのときの写真が掲載されています。ベッドに背をもたせかけ、食事をまえにした男性を看護師や調理師が囲み、妻がそっと男性の肩に手を添えています。遠からず訪れるであろう「その日」をまえに、みんなで記念撮影をします。
 著作権のためにみなさんに見ていただけないのが本当に、本当に残念な、それはじつに美しい写真です。
 
 ゲイとして人生の最期を迎えるとき、私はなにを食べ、なにを思うのか。
 私たちには、「よう食べたね」と肩に手を添えてくれる人はいるのだろうか。
 最期の食、そして家族。いまできることはなんなのか……。

 新聞紙上の1枚の写真を見ながら、なぜか涙が流れて止まらない私です。


 
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