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【エッセー】実録 一人暮らしが倒れたら

 8月号で書いた「緊急連絡先」の特別会員は、事務局長が自身の仕事(行政書士)としても一般向けに実施し、何人かのお一人暮らし高齢者が利用しています。すでに6年ほどお引き受けしているR子さんが突然倒れたときの話を書きます。

 R子さんは77歳。古い団地の4階(エレベータなし)で元気にひとり住まいをしています。
 9月のある金曜、出先の私の携帯に突然電話がかかってきました。「あの、きょう来ていただけませんか。しばらくご飯ものどを通らなくて……」。R子さんの緊急ヘルプに、少し動揺してしまいました。どうにか「きょうは予定がつかない。明日の朝、行きますから」と答えた私。電話口の感触では、まだ元気そうに聞こえたのが救いでした。
 翌土曜に訪ねたR子さんは、「もう1週間以上、食事がのどを通らない。買い物も行けず食べ物がない。水だけ飲んでいます」。衰弱こそしていますが、苦しさはなく、意識はハッキリしています。エアコンもない部屋で、夏バテでしょう。
 2、3日なにも食べてないというので、私が買い物に行き、慣れぬ土地で探し当てたスーパーで買ってきたチョコとスポーツドリンクを、美味しそうに口にしました。
 週明け月曜、地元の地域包括支援センターに相談電話をし、家庭訪問を依頼。しかし、当日の早朝、R子さんは不明熱を発し、自分で救急車を呼び入院していました(コロナは陰性)。
 10日ほどの入院から帰ってきたR子さんと、地域包括の人、私とで、今後の話し合いがもたれました。まだ元気で介護保険の要支援も難しそう。だが、団地4階までの上がり下りに難があり、さっそく買い物に困りました。介護保険未満で、ちょっと体調を崩したおひとりさまのサポートが、どうも難しいのです。
 団地内で下の階のかたがゴミ出しの手伝いはしてくれるが、さすがに定期的な買い物までは頼めない。社会福祉協議会のボランティアセンターも、いまはコロナで人繰りがつかず、派遣を断られました。スーパーの配達や宅配弁当を使おうにも、みんなネット注文でR子さんには無理。私がネット登録し、R子さんから電話で受けた注文を私が発注、配達はR子さん宅へ。こうして食料が届く体制をとり、あとはR子さんの体力が回復するのを祈るばかりです。
 今回のR子さんの一連のできごとから、私も「見守り」「高齢期支援」で、いろいろ学ぶことがありました。
 体調異変を言われとき、様子を見ず、迷わず救急車を呼ぶ勇気をもったほうがよかったようです。あと「見守り」を言うなら、そのかたの近隣の病院事情や買い物事情も把握しておくべきでした。じつはR子さんの団地の裏に、中規模の総合病院があったのです。
 一方で、私が身元引受人としての契約があることから、病院や包括の対応はスムーズでした。
 自宅へ戻ったあとの、買い物支援には悩みました。介護保険で恒常的なヘルパーをお願いするべきか。そうするとR子さんは4階の部屋から降りてこなくなるでしょう。今後、1階住居やサービス付き高齢者住宅への転居も考えなくてはならないかもしれません。
 今回の経験は、単身生活する高齢LGBTの先輩たちのサポートにいろいろな気づきをもたらしてくれたようです。

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