「キンキー・ブーツ」余聞、2題

【朝日新聞 2013.6.14(国際面)】
【朝日新聞 2013.6.11(ひと欄)】

 週末の今夜は、ブロードウェーで評判の作品、「キンキー・ブーツ」の話題。
 先週14日、国際面のいわば「町ネタ」、「世界発」欄は、ブロードウェーのショービジネスのウラ側を、このたびトニー賞(米演劇界の最光栄誉)で6部門を受賞した「キンキー・ブーツ」を例に紹介していました。
 この作品は、日本人プロデューサー川名康浩さんが参加していることでも話題です。その川名さんについては、11日の「ひと」欄で、紹介していました。

 

「キンキー・ブーツ」は、「父親の急死で経営危機の靴工場を継いだ息子が、ドラッグクイーンと偶然知り合い、ニッチ市場を開拓しようと「男性のためのセクシーな女ものブーツ」を開発、工場再建に奮闘するコメディー」「2005年の英国映画が原作」と。
 ドラッグのおネエサンたちが大活躍するとあって、映画がゲイコミュニティで話題になっていた記憶はあります。
 とはいえこの作品、ドラッグが活躍するハデな演出だけが売りというわけではなさそうです。「父の期待と息子の葛藤」という物語も伏線となっている、と。父の意思(遺志)に反した経営路線に乗り出す息子の葛藤もそうでしょうが、ゲイとして、ドラッグクイーンとして生きる登場人物たちも、親、わけても父の期待する息子像と自分の現実に葛藤しながら、それでも自己を肯定して生きる、という物語が展開しているようです。
 記者は、「女装を取り上げたことに観客はどう反応すると思いますか?」と聞きます。NYでいまさらこの質問はどうよ、という気もしますが(笑)、プロデューサーの一人は、「これは自尊心の物語です。だから老若男女、同性愛者も異性愛者も、みんな好きになってくれるはず」と述べているのが印象的です。
 記事はあわせてブロードウェーで一つの作品ができるまでの裏話、地方都市でのトライアウト(試験興行)からブロードウェーでのプレビュー(試演)へと登り詰め、でも不評なら即,退場のショービジネスの厳しさ、NYを支える一大地場産業、出資者やバブル時代の日本企業の動向など、オモシロい話題をつづっています。

 そこに活躍する日本人フリープロデューサーという存在も、目を引きます。「キンキー・ブーツ」のプロデューサーの一人、川名康浩さん(52)がその人。「ひと」欄で紹介されていました。
 「20年前、何のコネも資金もなしに体一つで渡米」。「いまや多くの業界人から「ハーイ、ヤス」と声をかけられる」。ある会合で映画のスピルバーグと同席したさい、「日本人がプロデューサー?」と驚かれたが、会話が進むと「君の半生で映画が撮れるね」とまた驚かれた、と。
 傑作だったのは、記事の末尾。
「この業界、ユダヤ系と同性愛者が多いとされる。アジア系で異性愛者はきわめて少数派だという」。川名さんはそれを受けて、「でも差別や偏見は感じなかった。共通するのは馬鹿がつくほど劇が好きだということですかね」と。
 フツー、逆境とされるなかでも頑張って、「でも差別や偏見は感じなかった」とけなげに述懐するのは、ゲイの役どころだったはずなのに……(笑)。
 たまにはこんな場面、見てみるのも新鮮でいいですね。

 2本の記事は、ともにニューヨーク・真鍋弘樹記者。ドラッグクイーンに、「女装した男性」とだけの注は、ちょっと物足りなかったけど。笑



 
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